司馬遼太郎の『街道をゆく』シリーズは私の愛読書で、旅に行く前には再読することにしています。「オランダ紀行」では、ライデンの町の古いたたずまいを絶賛し、オランダ人が干拓で国を作りあげたことを詳述しています。
　初日はそのライデンで泊まり、翌日町を歩きました。大きな風車が岸辺にあり、学生たちが自転車で町を行く姿が印象的でした。シーボルトハウスではシーボルトの持ち帰った日本の文物に目を見張りました。２００年前、これほどの情熱をもって日本を研究した人がいたのですね。午後からはロッテルダムを訪れ、個性的なビルにオランダ人の進取性を感じました。
　５日目に訪ねた延々と立ち並ぶキンデルダイクの風車群に、オランダが干拓によって作られた国であることを実感。６日目のアムステルダム駅にある天井の高いレストランでの昼食は、まるで映画の登場人物になった気分にさせてくれました。訪れた美術館では、ブリューゲルやレンブラント、ルーベンスの名画を間近に丁寧な解説で鑑賞することができ、至福の時となりました。ブレグジットの影響でオランダに欧州統括拠点を移す会社が多く、アムステルダムが活況を呈しているという話には驚きです。
　オランダと日本との長いつながりを再認識し、オランダという国のあり様を垣間見た旅でした。各地でお世話になったガイドの皆さんが個性的で知識も豊富だったのは、なによりの収穫でした。

歴史街道倶楽部『歴史の旅人』より転載