私たちのすむところとは異なる世界を「異界」と呼びます。異界には超自然的な存在が住まい、それらは時として私たちに災いや富をもたらすと考えられてきました。ともすると異界とは不可思議な世界と捉えがちですが、これは私たちが災厄への恐怖や社会の不安に対応するために想像してきた概念であり、実は日常生活の折々に異界との結節点がありました。ここでは、兆候・占い・禁忌・まじないや妖怪といった俗信や市井の人びとが伝えてきた民間信仰の事例から、この世ならざる異界を考えます。

【講　　師】俵　和馬　（大阪歴史博物館　学芸員）
　　　　　　　　　1991年　兵庫県生まれ。
　　　　　　　　　2019年　現職（民俗学）
　　　　　　　　　主な著書「霊場・生駒山地の産業と民俗―山地西麓に暮らす人びとの営み」
　　　　　　　　　　　　　『地方史はおもしろい５　日本の歴史を突き詰める―おおさかの歴史』
　　　　　　　　　　　　　「和歌山県紀美野町における動物の民俗」『民俗文化』(29)
　　　　　　　　　　　　　「嘉永四年の紀年銘を有する京屋唐箕について」『大阪歴史博物館研究紀要』(20)など