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歴史街道倶楽部 文楽鑑賞会 4月文楽公演「通し狂言 仮名手本忠臣蔵」事前解説付き

国立文楽劇場開場35周年を記念して、今年3回に分けて全段完全上演される「仮名手本忠臣蔵」を、倶楽部では事前解説付きの鑑賞会として実施しました。 今回の事前解説は、雑誌『上方芸能』の元編集長で、現在、追手門学院大学の講師を務めておられ、演劇ジャーナリストとしてご活躍の広瀬依子さんにお願いしました。 「音楽をともなう劇」としての「能」「歌舞伎」「文楽」の比較、「文楽」の歴史、太夫、三味線、人形遣いの役割などの解説をはじめ、プログラムにある出演者の名前の掲載順のことなど、演劇ジャーナリストの視点で紹介していただきました。後半は、仮名手本忠臣蔵についての解説。映画、ドラマ、歌舞伎など、たぶん誰もが一度は見たことがあると思われますが、それぞれ、焦点を当てる部分が違っている。忠臣蔵といえば「仇討ち」を連想するが、文楽では「情を描いた物語」であること。また、見る側からすると、年代によって感情移入する人物が変わってくる。若いときは、「力弥と小浪」「勘平とおかる」の恋の行方が気になり、年を重ねてから見ると、その親の気持ちになる。こうして見る年代によって、見方が違ってくるので、何度見ても面白いと。皆さんは、どの立場でご覧になったでしょう。

解説終了後、満席の劇場にて4月公演、物語の発端「大序」から切腹、城明渡しの場面4段目までを鑑賞しました。主君の恨みを晴らすため、仇討ちを決心するまでが描かれているのですが、間には、力弥と小浪、勘平とおかるの淡い恋物語もあり、否応なしに仇討ちに巻き込まれていく家族、友人などの人間ドラマが描かれています。そんななかで何と言っても見どころは、4段目の塩谷判官切腹の段。死装束をまとった判官は、家老の由良助の到着を待ちますが、もはやこれまでと腹に刀を突きたてる。息絶え絶えの判官のもとへ由良助がようやく到着して、切腹の刀を形見として受け取り無念を晴らす決意をする。客席の出入りが禁止される「通さん場(とおさんば)」と言われ、静かに流れていくこの場面では、三味線が場の緊迫観を増幅させます。人形の動きも少ないなかで、判官と由良助の心が伝わってきました。感極まって、すすり泣くお客様もおられるほどでした。 人形が演じ、これほどまでに悲しみ、切なさ、悔しさが表現される「文楽」に大きな拍手が贈られていました。 1は殿中刃傷の段(写真提供:国立文楽劇場)  2は塩谷判官切腹の段(写真提供:国立文楽劇場)

「次回もぜひ!!」とのお声をいただき、余韻に浸りながら劇場をあとにしました。 次回は、「夏休み文楽特別公演 通し狂言仮名手本忠臣蔵」5段目「山崎街道出合いの段」から7段目「祇園一力茶屋の段」を8月4日(日)に開催予定です。